関西発のD2C・ECブランドが、ここ数年で全国・海外へと存在感を広げつつあります。一方で、現場では「広告に頼りすぎて利益が残らない」「オムニチャネルをやりたいが、どこから手を付けるべきか分からない」といったお悩みもよく伺います。

本記事では、Shopify主催イベント「Commerce Connect in Kansai」の内容をもとに、関西発ブランドがスケールするための成長戦略を整理します。顧客体験、運用体制、データ活用、越境ECまで、明日からのアクションに落とし込める形でご紹介します。

この記事のポイント
  • 関西発ブランドが伸びる背景と、「体験の一貫性」がなぜ武器になるのかが分かります。
  • ブランドの“らしさ”を、商品・コンテンツ・接客に落とし込むCX設計の手順を整理します。
  • スケールさせるための運用体制・KPI設計・テックスタックの考え方をフェーズ別に解説します。
  • 越境EC・広告・個人情報など、成長期に増えるリスクとガバナンスの押さえどころを整理します。
  • 30/60/90日のロードマップ形式で、明日から着手できるアクションプランを提示します。
目次

イベント概要と読みどころ:関西発ブランドが今“伸びる”理由

Commerce Connect in Kansai の会場全体像を示し、ステージ登壇と観客、ネットワーキングの様子からイベントの雰囲気と規模感を伝えるイメージビジュアルです。
Commerce Connect in Kansai の会場イメージ:ステージとネットワーキングの両輪で学びとつながりを生む場

「Commerce Connect in Kansai」は、関西エリアのEC・D2C事業者が集まり、これからの成長戦略と運用のリアルを語り合うイベントです。単なる成功事例紹介ではなく、現場で起きている課題やボトルネックも含めて共有される点が特徴です。

本レポートでは、登壇内容そのものの再現だけでなく、関西発ブランドが伸びている共通要素を「体験設計」「運用体制」「データ・テクノロジー」「ガバナンス」という4つの切り口で整理します。自社のフェーズや課題にあわせて、必要なパートから読み進めていただけます。

「Commerce Connect in Kansai」とは?狙い・参加者・主なテーマ

Commerce Connect in Kansai の目的、参加者層、主要テーマを3つのカラムで整理し、イベントが誰に何を提供する場かを一目で理解できるインフォグラフィックです。
イベントの目的・対象・主要テーマを整理したインフォグラフィック

Commerce Connect in Kansai は、Shopifyエコシステムを軸に、ECの成長課題を立場を超えて議論することを目的としたイベントです。主催はShopifyでありつつも、登壇者にはブランド側・パートナー側・テクノロジーベンダーなど多様なプレイヤーが参加します。

参加者は、関西エリアを中心としたメーカー系D2Cブランド、小売事業者、スタートアップの経営者やEC責任者が中心です。テーマは「顧客体験(CX)」「運用・組織」「データ・テクノロジー」「越境・グローバル」など、これからの数年を見据えた成長の論点が並びます。

Shopify自体の最新アップデートについても触れられ、Shopify Plus を前提にしたオムニチャネルや海外展開の事例も議論されました。技術要素はありますが、経営者でも理解しやすいよう、売上・利益・LTVといった事業KPIに落とし込んで語られる構成になっていました。

要約ボックス:本レポートの結論(3〜5点)

本レポートの主要な結論をチェックリスト形式で5項目に整理し、体験設計・運用体制・データ活用・越境・ガバナンスの要点が一目で分かるインフォグラフィックです。
本レポートの結論をチェックリストで俯瞰したミニインフォグラフィック

本レポートから導かれる最大の示唆は、勝っているブランドほど、「体験設計 × 運用体制 × データ活用」の3点セットを地道に整えているという点です。単発のキャンペーンや広告ではなく、日々の運用がブランド価値を支えています。

また投資の順番としては、①計測とデータの整備 → ②顧客体験の改善 → ③体制とテックスタックの再設計 → ④越境や新チャネルへの展開、という流れが多くの登壇者で共通していました。逆に、計測と運用の土台がないまま広告と越境を一気に進めることが、大きな落とし穴になりやすいという警鐘も繰り返し語られていました。

成長戦略の核心:ブランド価値を“体験”に落とし込む設計

認知からロイヤルティまでのカスタマージャーニーをループ図で表現し、Web、店舗、メールなどのタッチポイントごとにブランド体験をどう設計するかを示すインフォグラフィックです。
ブランド成長を支えるカスタマージャーニーとタッチポイントの全体像

関西発ブランドが全国・海外で支持される背景には、単なる価格や機能ではなく、「ブランドの約束」が一貫した体験として届けられている、という共通点があります。認知・検討・購入・利用・再購入の各フェーズで、語ることとやることが揃っているイメージです。

そのためには、オンライン(ECサイト、SNS、メール)とオフライン(店舗、ポップアップ、イベント)を別々に考えるのではなく、一つのジャーニーとして再設計する必要があります。特にShopifyを中核に置く場合、Shopify POS[1] などと連携することで、体験の一貫性を保ちやすくなります。

“らしさ”の言語化と一貫性:商品・コンテンツ・接客の統合

ブランドのコアバリューからメッセージ、クリエイティブガイドライン、各タッチポイントへの展開までを4ステップの矢印でつないだブランド一貫性のマッピング図です。
コアバリューからメッセージ、クリエイティブ、タッチポイントへ落とし込むステップ図

まず重要なのは、ブランドの「らしさ」を抽象的なスローガンではなく、運用で使える言葉とルールに落とし込むことです。例えば「長く使える日用品」という価値であれば、「3年以上使える」「修理前提」「部品単位で買い足せる」といった具体的な約束に分解します。

次に、その約束を商品説明、撮影・デザインのガイドライン、カスタマーサポートのトークスクリプトに反映します。これにより、ECの商品ページ、SNSの投稿、店舗での接客、問い合わせ対応など、どこに触れてもお客様が同じメッセージを受け取れるようになります。このような一貫性のある体験こそが、LTV向上の土台になります。

登壇ブランドの多くは、いきなり立派なブランドブックを作るのではなく、「NG例・OK例」を数パターン共有するところから始めていました。完璧さよりも、現場が迷わないラインを素早く決めることが、限られたリソースで成果を出すうえでは重要だといえます。

オムニチャネルの基本:店舗・EC・SNSの役割分担と導線

店舗・EC・SNSの3チャネルを縦軸、集客・購買・継続の目的を横軸にしたマトリクスで、それぞれの役割と得意領域をチェックマークで整理した比較チャートです。
店舗・EC・SNSの役割分担とKPIを整理したマトリクス図

オムニチャネルというと、「すべてのチャネルを完全連携させる」イメージを持たれがちですが、登壇企業の多くは、まずはチャネルごとに役割とKPIを明確に分けるところから始めていました。例えば、店舗は「体験とブランド理解」、ECは「購買と品揃え」、SNSは「認知とファン化」といった具合です。

この役割分担がないまま「とりあえず店舗にもECにも在庫連携を」と進めてしまうと、在庫・値引き・接客方針がチャネルごとにバラバラになり、スタッフもお客様も迷いやすくなります。まずは「店舗で接客したお客様が、あとからECで迷わず買える」「SNSで見た情報と店舗の接客が矛盾しない」といった、ミニマムな一貫性から設計すると、現場の負荷を抑えながらオムニチャネル化を進められます。

Shopifyでは、実店舗販売機能[2] や各種SNS販売チャネルと連携することで、チャネルをまたいだ在庫・注文管理が可能です。とはいえ、技術連携よりも先に「どのチャネルで、どの体験を提供するか」を明文化しておくことが、結果的にシステム投資の無駄を減らします。

LTVを伸ばすCRM:リピート設計(購入後体験・会員・定期)

購入完了からサンクス、使い方案内、レビュー依頼、クロスセル提案、再購入に至るまでの5ステップをタイムラインで示し、LTV向上のためのCRMフローを視覚化した図です。
サンクスから再購入までを設計する購入後CRMフロー

イベント全体を通じて強調されていたのが、売上ではなくLTV起点で施策を組み立てるという視点です。具体的には、「初回購入をいかに増やすか」ではなく、「初回から2回目の購入までをどのような体験でつなぐか」を起点に設計します。

多くのブランドが取り組んでいたのは、①購入直後のサンクスメール・ページの改善、②商品到着タイミングに合わせた「使い方ガイド」配信、③利用実感が出やすいタイミングでのレビュー依頼、④使い切り前のリマインドや関連商品の提案という、シンプルなフローです。これらはShopifyとメール・マーケティングアプリ(KlaviyoやShopify Emailなど)を組み合わせることで、段階的に自動化できます。

会員プログラムや定期購入は、これらの体験が整ってから拡張しているケースがほとんどでした。先に制度設計だけを進めると、「入会したけれどメリットが実感できない」「定期を解約される」という事態になりやすいため、まずは「使う」「好きになる」体験の質を高めることが、結果的にLTVの最大化につながります。

スケールの鍵:運用体制・データ・テクノロジーの整え方

People・Process・Data・Tools の4層を積み重ねたレイヤー構造で、役割、業務プロセス、指標、ツールスタックの関係性を整理したスケール戦略のインフォグラフィックです。
人・プロセス・データ・ツールを重ねて考えるスケール戦略の全体像

広告やPRによって売上が伸び始めると、次に表面化するのが「運用が回らない」「データがバラバラで判断できない」という課題です。イベント登壇者の多くが、「売上が伸びたタイミングで、一度立ち止まって体制や指標を見直した」と語っていました。

スケールの鍵は、①役割と責任範囲(People)、②業務プロセス(Process)、③見るべき指標(Data)、④支えるツール(Tools)をセットで設計することです。いずれも一気に完璧を目指すのではなく、売上フェーズに応じて段階的に整えることが現実的です。

成長フェーズ別の体制:兼務から分業へ移行する目安

0→1、1→10、10→の3フェーズごとに、ファウンダー、マーケター、オペレーション、アナリストなどの役割がどの段階で追加されるかを示したフェーズ別役割チャートです。
売上フェーズごとに変化するチーム体制と役割のイメージ

立ち上げ期(0→1)では、ファウンダーや少人数のメンバーがマーケティング・在庫管理・CS・クリエイティブを兼務するケースが一般的です。この段階では、ツールの高度化よりも、「誰が最終責任者か」を決めておくことが重要です。

売上が1→10のフェーズに入ると、広告運用やコンテンツ制作、在庫・発送管理など、専門性が求められる領域から分業が進みます。このときのポイントは、採用や外注を進める前に、業務の流れや判断基準を簡易なドキュメントとして残しておくことです。属人化を放置すると、新しいメンバーが入ったときに「引き継ぎコスト」が爆発してしまいます。

10→のフェーズでは、データ分析やCRM、プロジェクトマネジメントなど、より横串の役割が求められます。ここまで来た段階で、専任のアナリストやプロダクトオーナーといったポジションを検討するブランドが多く、Shopify Plusなどの上位プランへの移行も現実的な選択肢となります。

見るべき指標:売上だけで判断しないKPI設計(CAC/LTV/粗利)

売上、粗利、CAC、LTV、リピート率をノードとして配置し、それぞれの間を矢印でつないで影響関係を示したEC向けKPIマップのインフォグラフィックです。
売上・粗利・CAC・LTV・リピート率の関係を整理したKPIマップ

売上が伸びているのに利益が残らない、という相談は非常に多くあります。登壇セッションでも、売上単体ではなく、「粗利」「顧客獲得単価(CAC)」「LTV」「リピート率」をセットでモニタリングしているブランドほど、安定した成長を実現していると紹介されていました。

特に広告依存度が高いブランドでは、短期的なROASだけに注目すると、割引やインセンティブを積みすぎて粗利が圧迫されるケースが少なくありません。そのため、施策評価の際には「CAC ÷ 粗利」や「初回LTV vs 6ヶ月LTV」といった指標も併せて見ることが推奨されていました。こうしたKPIは、Shopifyのレポート機能や分析機能[3]を活用することで、段階的に整備できます。

重要なのは、「どの期間・どのチャネルの数値を比較しているのか」をチーム内で共通言語化することです。期間定義(30日・90日など)や、含める費用項目(広告費のみか、送料や返品コストを含むか)がメンバー間でズレていると、議論が噛み合わなくなります。

テックスタックの考え方:統合・自動化・拡張性の優先順位

ストアフロント、決済、在庫・OMS、CRM・メール、分析、中央のデータレイヤーをブロックで配置し、相互に接続されたECテックスタック全体像を示す図です。
ストア、決済、在庫、CRM、分析をつなぐECテックスタックの概念図

ツール導入の相談でよくあるのが、「どのアプリを入れるべきか」「MAツールはどれが良いか」という質問です。登壇者の共通したスタンスは、「まず現場の運用フローを描き出し、その中で一番ボトルネックになっているポイントから自動化する」というものでした。

テックスタックを考える際は、①ストアフロント(テーマやヘッドレス構成)、②決済・チェックアウト、③在庫・OMS、④CRM・メール、⑤分析・BI、⑥それらを束ねるデータレイヤー、という6つのレイヤーに分けて整理すると、抜け漏れを防ぎやすくなります。そのうえで、Shopify標準機能とアプリ・外部ツールをどう組み合わせるかを検討します。

大切なのは、初期から複雑な構成を組むのではなく、「今の売上規模とチーム体制で、無理なく運用できるか」を基準に優先順位をつけることです。将来的な拡張性も重要ですが、現場で使いこなせない高度なツールを入れてしまうと、むしろデータが分散し、ガバナンスも弱くなってしまいます。

リスクとガバナンス:越境・広告・個人情報で失敗しない

プライバシー、セキュリティ、税金・配送、広告コンプライアンス、オペレーションの5つのリスク領域と、それぞれに対応する代表的な対策を二列構成で整理した比較チャートです。
主要なリスク領域ごとに対策を整理したガバナンスチェックリスト

売上が伸び、チャネルや国が増えるほど、リスクも指数的に増えていきます。イベントでは、越境ECや広告運用の成功事例だけでなく、「事前にルールを整えておけば避けられたトラブル」についても率直に共有されていました。

関西発ブランドにとっても、国内市場だけでなくアジアや欧米への展開は現実的な選択肢になりつつあります。だからこそ、越境・広告・個人情報の3領域について、最低限のガバナンスラインを早い段階で定めておくことが重要です。

越境ECの基本論点:配送・関税・返品・CSの設計

注文、決済、国際配送、通関、返品・カスタマーサポートの5つのステップを順番につないだフロー図で、越境ECにおける運用プロセス全体を俯瞰できるイラストです。
注文から通関・返品までを時系列で示した越境ECフロー

越境ECでは、「売ること」以上に、「届けること」と「支えること」が難しくなります。配送にかかる日数、関税や手数料の扱い、返品時の送料負担、多言語でのカスタマーサポートなど、国内とは異なる要素が一気に増えるためです。

イベントでは、まず①対象国・地域の優先順位づけ、②配送・関税・返品ポリシーの整理、③対応言語とSLA(返信目安時間)の明文化、④Shopifyと越境向けアプリの組み合わせ方、という4ステップで進める事例が紹介されていました。特に、関税や消費税の取り扱いは、現地パートナーや税務の専門家と連携しながら設計することが推奨されています。

Shopifyでは、Shopify Markets[4] などを活用することで、通貨・価格・言語・配送オプションを国ごとに最適化できます。ただし、機能面だけに頼るのではなく、「カスタマーサポートをどこまで自社で持つか」「どこから外部パートナーに任せるか」といった運用設計を並行して進めることが成功のポイントです。

広告とクリエイティブの注意点:短期ROAS依存の罠

一方の皿にROAS、もう一方の皿にLTVを載せた天秤のイラストで、計測期間や粗利、リテンションなどの注釈を添え、短期と長期KPIのバランスを表現した図です。
短期ROASと長期LTVのバランスを意識した評価軸のイメージ

広告費を増やせば売上は伸びますが、同時に粗利とLTVも見ていないと、事業としては「しんどい成長」になりがちです。イベントでは、短期ROASのみで判断して失敗した事例として、「ディスカウントやクーポンを打ちすぎて、リピート時にも値引きが前提になってしまった」という話も共有されていました。

登壇ブランドの多くは、広告クリエイティブの検証において、「初回購入のCVR」だけでなく、「一定期間後のリピート率」や「レビュー獲得率」も指標に含めています。これにより、「安くばらまくだけの広告」ではなく、ブランドの世界観や商品価値を理解してもらえるクリエイティブが伸びやすくなります。

また、プラットフォームごとの計測ロジックやアトリビューションの違いも踏まえ、Shopify側のデータと広告管理画面とを突き合わせて見ることも重要です。短期的な数字だけを追うのではなく、「この施策は誰のどんな課題を解決し、将来のLTVにどう効くのか」という問いをセットで持つことで、広告投資の質が変わってきます。

個人情報・セキュリティ:同意管理とアクセス権の最小化

ユーザー、役割ベースの権限レイヤー、顧客データという3層構造を矢印でつなぎ、同意チェックボックスのアイコンも添えた最小権限の概念図です。
役割ベースの権限設計と同意管理を組み合わせたデータ保護のイメージ

成長に伴い、社内外で顧客データに触れる人が増えると、情報漏えいリスクや誤操作のリスクも高まります。登壇企業が共通していたのは、「必要な人が、必要な期間だけ、必要な範囲にアクセスできる」状態を意識的に作っていることでした。

具体的には、①Shopify管理画面の権限ロールを細かく設定する、②外部パートナーにはプロジェクト単位でアクセスを付与・削除する、③マスターデータ(顧客情報・カード情報など)には最小限のメンバーしか触れないようにする、といった運用です。また、クッキーやメールマーケティングの同意管理、プライバシーポリシーの整備もセットで行う必要があります。

これらは一度整えれば終わりではなく、組織やツール構成の変化に合わせて定期的に見直すことが重要です。特に越境ECや新たなSaaS連携を行う際には、「どのデータが、どの国の、どのサーバーに保管されるのか」を確認し、必要に応じて専門家の意見を仰ぐことも検討するとよいでしょう。

実務に落とす:明日からのアクションプラン(30/60/90日)

30日、60日、90日の3つのマイルストーンを並べ、CX、Ops、Dataの3つのワークストリームがそれぞれどのタイミングで進むかを示したロードマップ図です。
30/60/90日のマイルストーンで整理したアクションプランの全体像

イベントで得た学びを現場で活かすには、具体的な「いつ・何を・どの順番でやるか」を決めることが欠かせません。ここでは、30日・60日・90日の3つの区切りで、関西のEC/D2Cブランドが実践しやすいアクションプランを整理します。

重要なのは、すべてを完璧にやり切ることではなく、短期間で「計測の土台」「体験改善のサイクル」「運用とガバナンスの再設計」という3つの軸を回し始めることです。この3つが回り出せば、その後の施策も「検証→学び→改善」のループに乗せやすくなります。

30日:計測の整備と“勝ち施策”の再現条件を揃える

KPI、トラッキングタグ、データベース、配送の4つを表すシンプルなアイコンとチェックマークで構成された、30日以内に着手すべきタスクのチェックリストです。
30日以内に整えたいKPI定義・計測・データ整備のチェックリスト

最初の30日で目指したいのは、「何がうまくいっているのか/いないのか」を判断できる状態を作ることです。具体的には、①主要KPI(売上、粗利、CAC、LTVなど)の定義をチームで揃える、②計測タグやコンバージョン設定を見直す、③商品マスタ・在庫・配送設定の整合性を確認する、といったタスクが中心になります。

これにより、過去の「なんとなくうまくいった施策」と、今から取り組む施策の結果を同じ物差しで比較できるようになります。すでに「勝ち施策」があるブランドにとっても、その再現条件(どのクリエイティブ・どのオファー・どの導線でうまくいったのか)を可視化することで、次の打ち手の精度を高めることができます。

このフェーズでは、「新しいことを増やす」よりも、「今あるデータと設定を整える」ことを優先してください。短期的な売上インパクトは小さいかもしれませんが、ここでの投資が、60日目以降の改善サイクルの質を大きく左右します。

60日:体験改善(LP/商品ページ/購入後)を2本立てで回す

コンバージョン改善レーンとCRM・リテンションレーンの2本の並行する道に、それぞれ仮説→テスト→学びのステップを並べた二軸実行のロードマップ図です。
CVR改善とCRM改善を並行して進める2レーン実行イメージ

次の30日(31〜60日目)では、①新規獲得を高める「LP・商品ページの改善」と、②LTVを高める「購入後体験・CRM改善」を、2本立てで回し始めます。どちらか一方に偏ると、短期か長期のどちらかの成果しか出ず、事業全体としての成長が鈍化しやすくなります。

LP・商品ページでは、「誰に」「どんな課題を」「どう解決する商品か」が1スクロール以内で伝わるかを確認し、クリエイティブやコピーのA/Bテストを行います。購入後体験では、サンクスメールや発送完了メールに、ブランドの約束や使い方ガイドへの導線を追加するところから始めると、工数を抑えつつ体験価値を高められます。

このフェーズのゴールは、「1サイクルでもいいので、計測された改善のループを回す」ことです。仮説 → 実装 → 計測 → 振り返り → 次の仮説、という一連の流れをチームで経験することで、以降の改善活動が自走しやすくなります。

90日:体制とツールを再設計し、スケール可能な運用へ

手順書(SOP)、権限管理、レポーティングの3要素を三角形の頂点として配置し、スケール可能な運用基盤をつくる三位一体の関係性を示した図です。
手順書・権限・レポートの3点から運用を標準化するフレーム

60日までで「計測」と「体験改善のサイクル」が回り始めたら、90日目に向けては、体制とツールの再設計に着手します。具体的には、①主要な業務フローのSOP(手順書)作成、②権限設計とアカウント管理の見直し、③定例レポートと会議体の設計、という3つのテーマに取り組みます。

このとき、「ツールをどう変えるか」から考えるのではなく、「どの業務を、誰が、どの頻度で行うのか」を先に整理することが重要です。そのうえで、「この業務はアプリで自動化できるか」「このレポートはBIツールでまとめた方が良いか」といった検討を行うと、投資対効果の高い改善につながります。

90日時点で、すべてを完了する必要はありませんが、少なくとも「これ以上売上が伸びたときに、どの業務や権限設計がボトルネックになるか」を把握できている状態を目指しましょう。こうした見立てがあると、採用や外注、Shopify Plus へのアップグレードなどの判断も、より戦略的に行えるようになります。

よくある質問(FAQ)

Commerce Connect in Kansaiとは何?どんな人が参加すべき?

Commerce Connect in Kansai は、EC/D2Cの成長課題(顧客体験、運用、データ、越境など)をテーマにしたイベントです。関西を拠点とするメーカー系D2Cブランドや小売事業者の、経営者・EC責任者・マーケティング/運用担当の方にとって、有益な学びやネットワークを得られる場になっています。

自社の課題を事前に言語化し、「顧客体験」「組織・運用」「データ・テクノロジー」「越境EC」など、どのテーマを深掘りしたいかを決めて参加すると、セッションの内容を自社に持ち帰りやすくなります。

関西発ブランドがECで伸びるための最優先ポイントは?

最優先すべきは、ブランドの「らしさ」を言語化し、それを体験として一貫して届けることです。商品・コンテンツ・接客(問い合わせ対応を含む)が、同じ約束を伝えている状態をつくることで、価格競争ではない形で選ばれやすくなります。

そのうえで、計測と運用体制を整え、改善サイクルを回せるようにすることが重要です。感覚ではなくデータに基づいて、「どの施策がLTV向上につながっているのか」をチームで共有できると、限られたリソースでも成果を出しやすくなります。

オムニチャネルは小規模でも始められる?注意点は?

オムニチャネルは、小規模なブランドでも段階的に始めることができます。すべてのシステムを一気に統合するのではなく、まずは店舗・EC・SNSなどチャネルごとの役割とKPIを明確にし、在庫・顧客データ・接客方針の「ズレ」をなくすところから着手するのが安全です。

注意点としては、「システムでできること」と「現場で運用できること」のギャップに配慮することが挙げられます。ShopifyとPOS、SNS販売チャネルなどの連携は強力ですが、同時にスタッフ教育やオペレーションの整備も必要になるため、現場と相談しながら優先順位を決めると良いでしょう。

LTVを上げるには、どの施策から着手すればいい?

LTV向上の第一歩としておすすめなのは、購入後の体験の見直しです。具体的には、①サンクスメール・ページの内容、②商品到着タイミングでの使い方案内、③レビュー依頼や関連商品の提案、といったコミュニケーションを整理・改善するところから始めると、効果とインパクトのバランスが取りやすくなります。

そのうえで、会員プログラムや定期便など、継続購入を促す仕組みづくりに進むと良いでしょう。その際は、粗利やCS負荷も合わせてモニタリングし、「続けてもらうほど事業としても健全であるか」を確認することが重要です。

越境ECで失敗しやすいポイントは?

越境ECでよくある失敗は、配送・関税表示・返品規定・多言語カスタマーサポートの設計不足です。販売開始後に「送料が想定より高かった」「関税負担が分かりにくく、クレームが増えた」といった問題が顕在化し、ブランドへの信頼を損ねてしまうケースがみられます。

対策としては、販売開始前に「届ける」「支える」運用を固めておき、対応範囲やSLA(返信目安時間など)を明文化しておくことが有効です。また、対象国を絞り、現地パートナーと連携しながら小さく始めることで、リスクを抑えつつ学びを蓄積することができます。

売上は伸びているのに利益が残らないのはなぜ?

売上が伸びているのに利益が残らない背景には、広告費の増加、割引施策の常態化、返品・カスタマーサポートコスト、物流費の上振れなど、さまざまな要因が絡み合っています。短期的な売上やROASだけに注目していると、こうしたコスト増加が見えにくくなってしまいます。

そのため、売上だけでなく「粗利」「CAC」「LTV」「返品率」などをセットでモニタリングし、施策の評価にも組み込むことが重要です。例えば、「広告キャンペーンAは売上は大きいが粗利が薄い」「キャンペーンBは売上規模はそこそこだがLTVが高い」といった比較ができるようになると、投資配分の意思決定が格段にしやすくなります。

まとめ:関西発ブランドが“回る運用”でスケールする条件

Commerce Connect in Kansai で共有された知見を振り返ると、関西発ブランドがスケールする条件は、単発の「打ち上げ花火」ではなく、日々の「回る運用」をどれだけ丁寧に作り込めるかに集約されます。とくに、体験の一貫性と、それを支える運用・データ・ガバナンスは、すべての登壇者に共通するキーワードでした。

実務レベルでは、①計測とデータの整備、②顧客体験(LP・商品ページ・購入後体験)の改善、③体制・テックスタック・リスク管理の再設計という3ステップを、30/60/90日のマイルストーンで進めるのが現実的です。この順番を意識することで、越境ECや新チャネルへの展開も「無理なく、再現性を持って」進めることができます。

本記事でご紹介した内容は、あくまで一般的なフレームです。実際には、事業ステージや商品特性、チーム構成によって、最適なアプローチは変わってきます。もし「自社の場合はどこから手を付けるべきか」を一緒に整理したい場合は、Shopify構築・運用支援を手がける株式会社EHACKまで、お気軽にご相談ください。

参考文献・引用元

  1. Shopify公式ドキュメント - 実店舗販売(Shopify POS)
  2. Shopifyヘルプセンター - 実店舗販売の概要
  3. Shopifyヘルプセンター - レポートと分析
  4. Shopify公式 - Shopify Markets 概要
  5. Shopify Japan 公式ブログ - EC・D2C事例・ノウハウ