新しい製品や既存サービスのリニューアルを任されたとき、どこから手を付ければよいか迷う方は多いのではないでしょうか。広告やキャンペーンは単発で実行できても、「誰に、何を、どう売るか」が曖昧なままだと、売上は安定して伸びません。
この記事では、製品マーケティング(プロダクトマーケティング)の定義から、顧客理解・価値提案・メッセージ設計・チャネル選定・ローンチ・運用改善までの流れを一気通貫で整理します。EC・D2C・SaaSなど業種横断で使える考え方に落とし込んでいるので、新規事業担当者やマーケ・PMの方が自社のGTM(Go-to-Market)戦略を見直す際のチェックリストとして活用いただけます。
- 製品マーケティングの定義と役割範囲、他のマーケ領域との違いが整理できます。
- 市場・顧客・価値提案・競合という4つの重要要素と、その具体的な設計方法がわかります。
- GTM設計からメッセージング、チャネル、ローンチ、計測・改善までの実行ステップを一連の流れで理解できます。
- 成果が出ない製品マーケティングにありがちな失敗パターンと回避策を事前に押さえられます。
- ShopifyなどのEC基盤を活用したい企業が、リプレイスや運用を検討する際の実務的なヒントを得られます。
製品マーケティングとは?目的と他領域との違いを整理
まずは、製品マーケティングが担当する「守備範囲」を明確にしておくことが重要です。商品マーケティングやブランドマーケティング、グロース施策と混同されやすいため、役割を整理しないまま動き出すと、社内で「誰がどこまでやるか」が曖昧になります。
ここでは、定義と隣接領域との違い、そして成果指標の考え方までを押さえ、製品マーケティングを学ぶうえでの全体像をつかんでいきます。これにより、自社の体制の中で何を任せるべきかも見えやすくなります。
定義:『誰に、何の価値を、どう伝え、どう売るか』を設計する
製品マーケティングとは一言でいうと、「誰に、何の価値を、どう伝え、どう売るか」を一気通貫で設計する仕事です。プロダクトの仕様や機能そのものではなく、それが顧客の文脈でどのような価値になるのかを翻訳し、市場に届ける役割を担います。
具体的には、顧客理解・ポジショニング・価格・販売チャネル・訴求メッセージ・営業支援・オンボーディングなどをつなぎ合わせて、売れる仕組みをつくります。単発のキャンペーンにとどまらず、プロダクトと市場を接続する「橋渡し役」として機能する点が特徴です。
商品マーケ・ブランド・グロースとの違い:混同しやすい境界線
商品マーケティングは、流通や棚取り、プロモーションなど「商品単位での売り方」に近いことが多く、ブランドマーケティングは企業やブランド全体の認知・好意を高める役割を担います。一方で製品マーケティングは、プロダクトと市場のフィット(PMF)を軸に、価値提案と売り方を統合的にデザインする役割です。
また、グロースチームがデジタル施策の改善や獲得効率向上にフォーカスするのに対し、製品マーケティングはその前提となるポジショニングやメッセージ、価格・プラン設計など「土台」に責任を持ちます。こうした違いを理解したうえで、どこまでを製品マーケがリードし、どこからを他チームと協業するかを合意しておくことが重要です。
成果指標(KPI)の基本:認知より『採用・継続・売上貢献』へ
製品マーケティングの成果を認知やクリック数だけで評価してしまうと、本来重視すべき「採用・継続・売上貢献」の改善が見えにくくなります。そこで、CVR、商談化率、ARPA、解約率、LTV、NPSなど、価値が実際に使われ続けているかを示す指標をKPIに組み込むことが重要です。
特にSaaSやサブスクリプション、ECのリピート商材では、初回購入だけでなく継続率やアップセルなどの指標までを見ないと、製品マーケティングの真のインパクトを測れません。ローンチ前に「このプロジェクトにおける成功とは何か?」を定義し、短期指標と中長期指標の両方をKPIとして設計しておくと判断がぶれにくくなります。
まず押さえる重要要素:市場・顧客・価値提案・競合
強いマーケティングは、華やかなクリエイティブよりも「誰のどんな課題に、どのような価値で応えるのか」が明確であることから生まれます。まずは市場・顧客・価値提案・競合という土台をしっかり固めることで、後工程のメッセージングやチャネル選定が一貫します。
ここでは「調査→整理→言語化」という流れで、ターゲット顧客と課題、バリュープロポジション、競合分析の3点を具体的に見ていきます。これらはECの新ブランド立ち上げでも、SaaSの新プラン設計でも、共通して使えるフレームです。
ターゲット顧客と課題:誰の『困った』を最優先にするか
最初の一歩は、ターゲット顧客を明確にし、その人がどのような状況で何に困っているかを具体的に把握することです。年齢や業種といった属性情報だけではなく、「どんな仕事(ジョブ)を達成したいのか」「現状どんな代替手段でしのいでいるのか」まで理解することで、刺さる価値提案が見えてきます。
ペルソナを設計する際は、「状況」「ジョブ」「痛み(Pain)」「代替手段」「成功条件」「購買障壁」といった項目をカード形式で整理すると実務で扱いやすくなります。これにより、複数の候補セグメントの中から、最も深い課題を持ち、かつ自社が優位性を出せる顧客群を優先して狙う判断がしやすくなります。
バリュープロポジション:便益と差別化を1文で言える状態へ
機能や特徴を列挙するだけでは、顧客にとっての価値が伝わりづらくなります。そこで重要なのが、バリュープロポジション(価値提案)を1文で言えるようにすることです。「誰が・どんな状況で・この製品を使うと・どのような成果が得られるのか」を端的にまとめます。
実務では、まず「顧客が得たい成果」を洗い出し、次に「競合や代替と比べて優れているポイント(差別化)」を整理し、最後に「それを裏付ける証拠(実績・データ・レビューなど)」をそろえます。この3要素を組み合わせることで、LPや営業資料、Shopifyの商品ページなど、あらゆるタッチポイントで一貫した説得力のあるメッセージを打ち出しやすくなります。
競合分析:比較される前提で『選ばれる理由』を作る
多くの市場では、顧客は少なくとも2〜3の選択肢を比較検討したうえで意思決定します。その際に重要なのは、競合製品だけでなく「手作業」「既存ツール」「何もしない」という代替案も競合として扱うことです。こうした前提を持つことで、「なぜ今この製品を選ぶべきなのか」というメッセージが作りやすくなります。
比較表を作成するときは、「価格」「導入難易度」「主要機能」「サポート」「効果が出るまでの時間」などの比較軸を並べ、自社・競合A・競合B・代替手段を横並びで評価します。そのうえで、自社が特に強い項目をビジュアル的に強調し、営業資料やECサイトの商品ページなどで「選ばれる理由」として一貫して伝えることがポイントです。
実行ステップ:戦略設計→メッセージ→チャネル→ローンチの流れ
重要要素が整理できたら、次は実行の順番を設計します。やみくもに広告や施策を走らせるのではなく、GTM設計 → メッセージング → チャネル設計 → ローンチ計画という一連の流れを意識することで、チームの認識を揃えやすくなります。
このセクションでは、特に影響の大きい「GTM設計」「メッセージング」「ローンチ計画」の3つを取り上げて解説します。Shopifyなどのプラットフォームを使ったECサイト構築でも、SaaSの新プランローンチでも同じ構造で考えることができます。
GTM(Go-to-Market)設計:誰に、何を、どこで、いくらで
GTM設計とは、新しい製品や機能を市場に投入する際の「売りに行き方」を定義することです。ここでは「誰に(Target)」「何を(Value)」「いくらで(Price)」「どこで(Channel)」「どのような体制で(Sales/Support)」届けるのかを1枚のシートにまとめます。このGTMワンシートが、社内の共通言語として機能します。
例えばShopifyで新しいサブスクリプション商品を販売する場合、「対象顧客は既存顧客のうちLTV上位20%」「オファーは年間プランの先行予約」「チャネルは自社ECのポップアップとメール」「サポートは専任CS」がGTM設計として定義されます。このように事前に全体像を整理しておくことで、施策ごとの判断がブレにくくなり、実行スピードも上がります。
メッセージング:刺さる訴求を『一貫性』で強くする
次に、GTM設計で定めた価値提案を、実際に顧客に届ける「言葉」に落とし込みます。ポイントは、LPのヘッドコピー、広告の訴求、営業資料の主張、FAQの表現など、すべてのタッチポイントで一貫したメッセージを使うことです。
具体的には、屋根となる「コアメッセージ」、それを支える複数の「主要ベネフィット」、その下に「証拠(データ・事例・レビュー)」「共通のCTA」を配置した「メッセージハウス」を作ると再現性が高まります。これを基に、Shopifyの商品説明文やメルマガ、広告クリエイティブの原稿を作成すると、どのチャネルから入ってきた顧客にも同じ価値が伝わりやすくなります。
ローンチ計画:準備物・タイミング・担当を運用に落とす
ローンチを成功させるには、「いつまでに・誰が・何を用意するか」を具体的なタスクに落とし込む必要があります。例えばT-30(30日前)にはGTMとメッセージの合意、T-14にはLPと商品ページの初稿、T-7にはFAQ・計測タグ・Shopifyフローの確認など、マイルストーンごとにチェックリストを用意しておくと抜け漏れを防げます。
また、ローンチ当日だけでなく、T+7やT+30など「ローンチ後のレビュー日程」を事前にカレンダーへ組み込んでおくことも重要です。そのタイミングでKPIの初期値を確認し、メッセージや導線の改善アイデアを洗い出すことで、イベントで燃え尽きるのではなく継続的な改善サイクルへつなげられます。
運用で差がつく:計測・改善・社内連携(E-E-A-Tを高める)
製品マーケティングの真価は、ローンチ後の運用フェーズで現れます。データと現場の声をもとにメッセージや導線を磨き込み、営業・CS・開発と連携して製品そのものも改善していくことで、検索エンジンや生成AIから見たE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)も高まっていきます。
ここでは、計測設計、改善サイクル、社内ガバナンスという3つの観点から、継続成長につながる運用のポイントを整理します。ECやSaaS問わず、リテンションとLTVを伸ばすうえで重要な要素です。
計測設計:何を成功とするかを先に決める(イベント/タグ/KPI)
計測設計は、ローンチ後に「結局、成功なのか失敗なのか」が判断できるようにするための事前準備です。まずは、申し込み完了やカート投入、トライアル開始、継続課金などの主要イベントを定義し、それぞれがどのKPIと紐づくかを整理します。
次に、Google アナリティクスやShopify、MA/CRMツールなどで必要なイベントとUTMパラメータを設定し、ダッシュボードで可視化します。最後に、週次もしくは隔週でレビューするミーティングの場とフォーマットを決めておくことで、「データを取っただけ」で終わらずに意思決定へつなげられます。
改善サイクル:メッセージ→導線→オファーを優先度順に検証
改善サイクルでは、すべてを同時に直そうとするのではなく、インパクトの大きい順に仮説検証することが重要です。一般的には、まず「メッセージ」、次に「導線(UI/UX)」、最後に「オファー(価格や特典)」の順で検証すると、限られたリソースでも効果を出しやすくなります。
具体的には、Impact(売上・CVRへの影響の大きさ)とEffort(実装工数)の2軸マトリクスで施策を整理し、「Quick wins(高インパクト・低工数)」から着手します。A/Bテストやユーザーインタビューを活用しながら、仮説→実行→学習→共有のサイクルを継続することで、ECサイトやSaaSのプロダクト体験を継続的に最適化できます。
社内ガバナンス:価格・表現・法務チェックで信頼性を守る
製品マーケティングは売上に直結する一方で、表現や価格設定を誤るとユーザーとの信頼関係を損ねるリスクもあります。そのため、特にヘルスケアや金融、サブスクリプションビジネスでは、「ドラフト→法務・コンプライアンスレビュー→責任者承認→公開→モニタリング」という承認フローをあらかじめ設計しておくことが重要です。
また、誇大表現を避け、事実に基づくデータやレビュー、第三者評価を活用して訴求することで、検索エンジンや生成AIから見た信頼性も高まります。たとえば、Shopifyで提供されている公式機能について説明するときは、Shopify公式ヘルプセンター[1]の文言を参考にしつつ、自社の実績や事例を加えるとよいでしょう。
よくある失敗と注意点:成果が出ない製品マーケの落とし穴
ここまでのポイントを押さえても、実務では「思ったほど成果が出ない」ということもあります。その多くは、特別なミスというよりも、よくあるパターンの積み重ねです。そこで、代表的な落とし穴と回避の考え方を先に知っておくことで、同じ失敗を繰り返さずに済みます。
特に、機能説明に偏るケース、ターゲットを広げすぎるケース、ローンチだけに力を入れて運用を設計できていないケースは頻出です。自社の状況を振り返りながら、どれに当てはまりそうか確認してみてください。
機能説明だけで終わる:便益・証拠・比較が不足する
多くの製品ページや営業資料が陥りがちなのが、「高性能な◯◯機能を搭載」「◯◯ができます」といった機能説明で終わってしまうパターンです。これでは、顧客が「結局、自分にどんな良いことがあるのか」をイメージしづらく、比較検討のテーブルにも乗りにくくなります。
そこで、「便益(Benefit)→証拠(Proof)→比較(Comparison)→CTA(次の一歩)」という順序に組み替えることを意識します。例えば、「在庫管理の手間を50%削減できます(便益)」→「実際に◯社で工数が半減しました(証拠)」→「従来の手作業や他ツールと比べて◯◯が優れています(比較)」→「今すぐデモを予約(CTA)」という流れにするだけで、メッセージの伝わり方は大きく変わります。
ターゲットが広すぎる:誰にも刺さらないメッセージになる
「誰でも使える」「あらゆる業種で利用可能」と訴求したくなる気持ちは自然ですが、実際にはターゲットが広いほどメッセージは抽象的になり、誰にも刺さらなくなってしまいます。特にローンチ初期は、勝てるセグメントに絞って深く刺さる訴求を作ることが重要です。
実務では、「市場全体」からスタートし、「業種」「課題」「利用シーン」「意思決定者」といった軸で徐々に絞り込む漏斗を描きます。そのうえで、最初に狙うべきメインセグメントと、次に展開するセカンダリセグメントを分けて設計すると、成長のステップが描きやすくなります。
ローンチで燃え尽きる:運用(学習)設計がない
ローンチに向けて全力投球した結果、公開後に振り返りや改善の時間が取れないまま次のプロジェクトへ…という状況もよくあります。これでは、せっかく得られた学びが組織に蓄積されず、同じような課題に毎回ゼロから向き合うことになってしまいます。
そこで、「Measure(計測)→Review(レビュー)→Prioritize(優先付け)→Ship(実装)→Share(共有)」という運用サイクルを、ローンチ前の段階でカレンダーに組み込んでおきます。週次レビューや月次レトロスペクティブの場を設けることで、学びをナレッジとして残し、次の製品や施策にも活かしていくことができます。
よくある質問(FAQ)
製品マーケティングやGTM設計について、よくいただく質問と回答をまとめました。疑問が近いものがあれば、まずはこちらをご覧ください。
製品マーケティングとは?プロダクトマーケティングとの違いは?
一般に同義で使われ、製品(プロダクト)の価値を市場に届ける活動全体を指します。組織によっては担当範囲(GTM、メッセージ、販売支援など)の呼び方が異なるため、成果物と責任範囲で定義すると混乱が減ります。
製品マーケティングの実行ステップは何から始めるべき?
最初は顧客課題とセグメントの明確化(誰の何を解決するか)から始めます。その上で価値提案、競合比較、メッセージング、チャネル選定、ローンチ計画、計測と改善の順に落とすと再現性が高いです。
バリュープロポジションはどうやって作ればいい?
顧客が得たい成果(便益)を定義し、競合や代替より優れている点(差別化)を選び、信頼できる根拠(データ、実績、レビュー、仕様の事実)を添えて1文にまとめます。作った後はLPや営業トークで検証し、言葉を磨きます。
製品ローンチで最低限用意すべきものは?
代表的には、ターゲットと訴求が揃ったLP、価格とオファー設計、主要FAQ、比較資料、計測設定(イベント/UTM/KPI)、問い合わせ導線、販売/CS向けの説明資料です。規模に応じて優先順位をつけ、抜けを減らします。
競合が多い市場で差別化するにはどうする?
機能の違いだけでなく、導入のしやすさ、サポート、価格体系、成果までの時間、特定業界/用途への最適化など比較軸を増やして整理します。直接競合に加え『手作業』『現状維持』といった代替も含めて、選ばれる理由を言語化します。
製品マーケティングのKPIは何を見ればいい?
業態によりますが、短期はCVRや商談化率、長期は継続率・解約率・LTV・リピート率など『価値が使われ続けているか』に近い指標が重要です。ローンチ前に成功基準と計測方法を合意しておくと判断が速くなります。
まとめ:製品マーケティングで継続的な成長を実現する
製品マーケティングは、単なるプロモーションではなく、顧客課題の理解から価値提案・メッセージ・チャネル・ローンチ・計測改善までを一気通貫で設計する仕事です。ここまで見てきたように、市場・顧客・価値・競合という土台を固めたうえで、GTM設計とメッセージング、ローンチ計画、運用サイクルへとつなげることが重要です。
まずは、自社が狙う顧客と「選ばれる理由」を言語化し、それをLPや営業トーク、ECサイトの商品ページなど具体的なタッチポイントに反映していきましょう。そのうえで、計測と学習の仕組みを回し続けることで、製品そのものとマーケティングの両方が磨かれ、継続的な売上成長につながります。
Shopifyなどのプラットフォームを活用すれば、GTMの検証サイクルを素早く回せる一方で、設計次第で成果は大きく変わります。もし、自社の製品マーケティングやEC基盤の見直しに課題を感じている場合は、外部の専門家と一緒に設計から運用までをレビューしてみるのも一つの方法です。





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